神楽坂の日本料理「愚直に」へ。
店名の通り、奇をてらうことはありません。
旬の素材を選び、丁寧に手を入れ、素材そのものの良さを引き出していく。
派手な演出ではなく、一皿一皿を積み重ねながら季節を感じさせる日本料理でした。
今回は夏の献立。
賀茂茄子、鮎、鮑、冬瓜、とうもろこし、ハタ、毛蟹、じゅんさい、鴨、ハモ。
夏の食材をさまざまな形で楽しみました。
お店について

「愚直に」は2020年に開業。
神楽坂 石かわを中心とするI1Companyの日本料理店です。
2026年3月、神楽坂4丁目から現在の神楽坂6丁目「NEO神楽坂」へ移転しました。
同じ建物には「波濤」「NK」「TsunAgu」も入っています。
新しい店内は白木のカウンター8席が中心。
2〜4名で利用できる個室も1室あります。
華美な装飾はありません。
料理に集中できる静かな空間です。
公式サイトには、
「色や派手さに頼らず、基本をていねいに重ねる」
という店の考え方が記されています。
今回食事をして感じた「愚直に」らしさも、まさにそこにありました。
店主について

店主は大塚将人さん。
1988年、長野県生まれ。
ご本人のお話では、赤坂の「菊乃井」で経験を積んだ後、海外での仕事も経験。
その後、石川秀樹さんが率いる石かわグループに移られ、2020年、「愚直に」の開業とともに店主に就任。
2022年11月には「ミシュランガイド東京」で一つ星を獲得しました。
菊乃井で学んだ日本料理の基本。そこに石かわグループで培った考え方が重なります。今回の料理にも、その背景がよく表れていました。
奇をてらうのではなく、旬の素材に丁寧に手を入れる。出汁、火入れ、温度、食感を整え、一皿としてまとめていく。
店名の「愚直に」と料理のスタイルが、きれいにつながっているように感じました。
この日の料理
賀茂茄子と雲丹

最初は賀茂茄子と雲丹。
出汁をたっぷり含んだ賀茂茄子は、みずみずしく、とろけるような食感。
そこに濃厚な雲丹。山葵が全体を締めます。
最初の一皿から期待が高まりました。
長良川の鮎ときゅうりの手巻き

鮎を丸ごと使い、自分で海苔に巻いていただきます。
鮎の香ばしさとほろ苦さ。きゅうりの食感。そこに海苔の香りが重なります。
夏らしい一品です。
鮑と冬瓜のお椀

青柚子が香る澄んだ出汁。
やわらかな鮑と、出汁を含んだ冬瓜を合わせます。
面白いのは途中から。肝のソースを加えると、同じお椀の印象が大きく変わります。澄んだ味から、鮑らしい厚みのある味へ。
一椀の中で二つの表情を楽しめました。
淡路の平目と千葉の縞鯵

お造りは淡路の平目と千葉の縞鯵。
醤油、塩、ちり酢。合わせる調味料を変えながら、それぞれの魚の持ち味を楽しみます。
とうもろこしとカラスミ

炭火で焼いたとうもろこし。
甘さをしっかり引き出したところに、カラスミの塩味と旨みを重ねます。構成はとてもシンプル。
それだけに、とうもろこしそのものの甘さが際立ちます。
ハタの炭火焼き

ハタは炭火焼きで。
皮目は香ばしく、身はふっくら。みぞれおろしを添えることで、魚の脂を残しすぎません。
火入れの良さがよく分かる一皿でした。
毛蟹と信州蕎麦

愚直にではコースの途中に大塚さんの故郷の信州蕎麦が入ってきます。
今回は、毛蟹を合わせ、出汁のジュレを添えています。冷たさと喉越しが気持ちよく、ここでコースの流れが一度切り替わります。
この一皿を入れる位置もよかった。
鴨とじゅんさい

鴨の旨みに、じゅんさい独特のつるりとした食感。
しっかりとした味の鴨を使いながら、重たく感じさせません。
こちらも夏らしい仕立てです。
ハモと万願寺唐辛子の土鍋ごはん


締めはハモと万願寺唐辛子。
ふっくら炊き上げたご飯に、ハモの上品な旨み。万願寺唐辛子の青い香りがよく合います。
おこげも香ばしく、最後まで箸が進みました。

デザートまでいただき、夏のコースが終了。
Yummies View
この店の訪問記
- 神楽坂|愚直に|長野への郷土愛を映す日本料理
- 神楽坂|愚直に|素材に正面から向き合う、夏の日本料理

「愚直に」という名前が、そのまま料理に表れている店でした。
驚かせるための料理ではありません。
珍しい組み合わせを見せるわけでもない。
旬の食材を選ぶ。
出汁を引く。
炭火で焼く。
適切な温度で出す。
一つ一つは日本料理の王道です。
その基本を高いレベルで積み重ねています。
今回特に印象に残ったのは、コース全体の流れでした。
賀茂茄子と雲丹から始まり、鮎、鮑、造り、炭火焼き。
途中に冷たい蕎麦を挟み、鴨を経て土鍋ごはんへ。
料理を食べ終える頃に次の一皿が出てきます。
間延びしません。
かといって急かされる感じもない。
日本料理では料理そのものだけでなく、このテンポが食後の印象をかなり左右します。
「愚直に」はそこまでよく考えられていました。
今回は夏。
次に来るなら松茸の季節。
秋の「愚直に」が、夏とはどのような違う景色を見せてくれるのか。
また訪れたいと思います。