西新橋の「あらたみかわ」を訪問しました。
新橋と虎ノ門の中間あたり。オフィス街にある天ぷら店です。
店主は「みかわ是山居」で研鑽を積んだ小川比佐男氏。師匠である早乙女哲哉氏から「あらた」の名を授かり、独立しました。
この日は春の山菜が揃う時期。山形の天然こごみ、たらの芽、こしあぶらなどをいただきました。
食べ終えて一番印象に残ったのも、やはり山菜でした。
お店について
「あらたみかわ」は西新橋、新橋駅と虎ノ門駅の間あたりにあります。
周囲はオフィスビルが多いエリアですが、店内に入ると雰囲気は落ち着いています。
カウンターを中心としたつくりで、小川氏が素材を揚げる様子を目の前で見ることができます。
料理はおまかせ。
派手な演出を入れるのではなく、素材の状態を見ながら一つずつ揚げていく、オーソドックスな天ぷらです。
衣を食べさせるというより、素材の香り、水分、苦味、甘みをどう残すかに重きを置いているように感じました。

店主について
店主の小川比佐男氏は、天ぷらの名店「みかわ是山居」で早乙女哲哉氏のもと研鑽を積み、独立しました。
店名の「あらた」は早乙女氏から授けられたものだそうです。
実際にカウンター越しに仕事を見ていても、余計な動きは少なく、淡々と一品ずつ仕上げていきます。
接客も構えたところがありません。
話し方も自然で、自分の天ぷらを真面目に追求していることが伝わってきます。
「みかわ」の系譜を感じる一方、そのまま再現するのではなく、自分の店として少しずつ形を作っている印象を受けました。

この日のおまかせ
最初は山菜のお浸しから。

車海老
中心に弾力を残した火入れ。衣は軽く、海老そのものの甘みがしっかり感じられます。
天ぷらは車海老2本、海老頭と続きます。


海老頭
身とは対照的に、香ばしさと食感を楽しむ一品。しっかり揚げ切っています。

キス
身はふわりと柔らかい。水分を残しながら軽く仕上げています。

いか
硬くならず、柔らかな食感。噛むといかの甘みが出てきます。

ここから、この日楽しみにしていた山菜へ。
こごみ
この日の中でも特に印象に残りました。
くるりと巻いた若芽の食感が心地よく、クセは穏やか。ほのかな青い香りと自然な甘みがあり、春らしい瑞々しさを感じます。

たらの芽
ほろ苦さと山菜らしい風味がしっかりあります。衣を軽くすることで、芽の中に残る水分とほろ苦さが素直に伝わってきました。

こしあぶら
独特の香りがはっきり出ています。口に入れると独特の芳香が広がり、後からほのかな苦味が続きます。天ぷらにすることで香りがより立っていました。

ふきのとう
丸みのある形のまま揚げられ、噛むと独特の香りとしっかりした苦味が広がります。たらの芽よりも野性味があり、春の山菜らしさを強く感じる一品でした。

それぞれ香りや苦味の出方が異なりますが、素材の個性を消さず、軽い衣でまとめています。
めごち
淡白な白身をふっくらと。水分の残し方がよく、身の繊細さを感じます。

アスパラ
中心までしっかり熱を入れながら、みずみずしさも残しています。加熱することで甘みがよく出ていました。

稚鮎
小さな魚の中に、身の味と内臓の苦味があります。山菜とはまた違った形で春を感じる一品です。

うにしそ巻き
別料金ですが追加をお願いした一品。うにの濃厚な旨味に大葉の香りを合わせます。この日のコースの中では少し華やかな一品。山菜や白身魚が続いた後なので、味の変化にもなりました。

穴子
揚がったばかりの穴子を菜箸でパリッと二つに割ってくれます。師匠譲りのパフォーマンス。
厚みのある穴子ですが、仕上がりは軽やか。表面と中の食感の違いも楽しめます。

さつまいも
時間をかけて火を入れる天ぷらの定番。甘みを引き出してコース終盤へ。


小天丼
タレの味を強くしすぎず、最後まで重たくならない仕上がりでした。

デザートをいただいて終了です。


この日の「あらたみかわ」で最も印象に残ったのは、天然山菜の扱いでした。
特に、こごみ、たらの芽、こしあぶら。
それぞれ香りも苦味も違います。その個性を消さず、天ぷらとして軽くまとめています。
天ぷらというと海老や魚に目が向きがちですが、季節の野菜や山菜をこれだけ楽しめるのも面白いところです。
店内には適度な静けさがありますが、緊張感を強いる店ではありません。客層も食事そのものを楽しみに来ている人が中心で、カウンターでも自然体で過ごせます。
小川氏の接客も穏やかです。
「みかわ是山居」で培ったものを土台にしながら、自分の天ぷらを着実に作っている。
春の山菜の時期には、また訪れたいと思える一軒でした。