今回で3度目となる「天ぷら 小泉」。

金沢を訪れる際は、まず小泉の予約を押さえ、それに合わせてほかの店を組み入れています。

予約の受付は2カ月前から。この日も受付開始に合わせて電話で予約しました。

お店について

片町の大通りから少し入った、池田町の静かな裏通りにあります。

金沢駅からはタクシーで10分ほど。町家を使った店内はカウンター席のみです。目の前で食材が揚がっていく様子を楽しめます。

落ち着いた空間ですが、過度な緊張感はありません。自然体で料理に向き合える雰囲気です。

店主について

店主は小泉清二郎さん。

エコール辻大阪を卒業し、大阪の老舗天ぷら専門店に入り、ホテル内の店舗や東京店で経験を積みました。母校で外来講師を務めたこともあります。

金沢で店を開いたきっかけは、辻調時代の同級生である「鮨 みつ川」の光川浩司さんから声をかけられたことでした。2010年7月に独立。2015年4月に現在の池田町へ店を移しました。

小泉さんの天ぷらは、衣を白く薄く仕上げる関西風が基本です。北陸の魚介や加賀野菜に、各地から届く旬の食材を組み合わせます。素材によって火の入れ方を細かく変え、持ち味を素直に引き出します。

話好きで気さくな人柄も、小泉を再訪したくなる理由の一つです。食材の産地や特徴、食べ方を分かりやすく説明してくださいます。会話は楽しい一方、揚げる仕事は緻密です。その親しみやすさと職人としての精度が、店の居心地の良さにつながっています。

この日のおまかせ

北陸の食材を軸に、前菜、刺身、天ぷら、食事へと無理なくつながるコースでした。

天ぷらは衣が軽く、油の重さや雑味をほとんど感じません。食材ごとに火の入れ方を変え、持ち味をはっきりと引き出しています。

ほたるいか、あさつき、酢味噌、まるば春菊

最初のほたるいかは、濃い旨みに酢味噌の酸味がよく合います。あさつきと、まるば春菊のほろ苦さが春らしい一皿でした。

刺身 すみいか・バイ貝

刺身のすみいかは、ねっとりとした食感。噛むほどに甘みが広がり、素材の良さがよく分かりました。バイ貝には心地よい弾力があります。

天ぷら

揚げる前に、この日使う食材を籠に並べて見せてくださいます。食材の産地や特徴を、小泉さんの説明とともに確認できます。

七尾のひうお、くちこ

ひうおの繊細な旨みに、くちこの濃い塩気とそら豆の甘みを重ねた天ぷらです。異なる味と食感を一つにまとめた、小泉らしい組み合わせでした。

ふきのとう

ふきのとうは、春らしい香りとほろ苦さが鮮明です。薄い衣が葉の軽さを保ち、口の中でほどけます。季節を感じる一品でした。

輪島の毛蟹

毛蟹は衣を薄くまとわせ、身の甘みを引き出しています。火が入ることで蟹の香りが立ち、ほぐれる身の食感も楽しめました。

はたはた

身はふっくらとして、皮目には香ばしさがあります。小ぶりな魚の旨みを損なわない、丁寧な火入れでした。

ブロッコリー

房の間に薄く衣が入り、さくっとした食感に仕上がっています。噛むとブロッコリーの甘みが広がりました。

淡路島の雲丹

福井のすがもを揚げ、その上に淡路島の雲丹をのせています。揚げたすがもの香ばしさと食感に、雲丹の濃厚な甘みが重なります。二つを一緒に食べることで完成する、印象に残る組み合わせでした。

口直し

魚介が続く中で、味の流れを切り替える一品でした。

たらの芽

たらの芽は、茎のほくほくした食感と穏やかな苦味が印象的です。衣は薄く、芽のやわらかさと春らしい香りをきれいに残していました。

帆立

帆立の火入れが見事でした。表面には香ばしさがあり、中心には水分を残しています。厚みのある身から、帆立の甘みがしっかりと感じられました。

加賀蓮根

加賀蓮根は、シャキッとした歯触りと、ほくほくした食感が同居します。土地の食材を天ぷらで味わう、小泉らしい一品です。

鰆は脂を重く感じさせない仕上がり。身のやわらかさと旨みを保ちながら、軽やかに食べられます。

白子の紫蘇巻き

白子を紫蘇で包み、海苔で留めて揚げています。外側は軽く、中はなめらか。白子の濃厚な味を紫蘇の香りが引き締めます。

半年熟成のさつまいも

この日のハイライトは、半年間熟成させたさつまいもでした。水分を保ったしっとりとした質感。熟成によって増した甘みが凝縮されています。デザートに近い満足感がありながら、天ぷらの流れの中にきれいに収まっていました。

天丼

締めは天丼、天ばら、天茶から選べます。今回も天丼にしました。香ばしいかき揚げとタレのバランスが良く、最後まで重さを感じません。

甘味

紅はるかとスカイベリーに和三盆。さつまいもの甘みと苺の酸味で、穏やかにコースを終えました。

Yummies View

4.5 / 5

金沢に来たら、必ず立ち寄りたい天ぷら店です。

北陸の素材を生かした構成。食材ごとに変える正確な火入れ。重さを残さない衣。どの要素にも高い安定感があります。

季節が変われば、使われる魚介や野菜も変わります。何度訪れても、その時期の北陸を味わえるのが小泉の魅力です。

初めての方を連れて行く場面でも安心して選べます。金沢での食事に組み込みたい一軒です。