鎌倉の「北じま」を訪問しました。
金木犀茶から始まり、柿、菊、月見団子、天然きのこへ。秋の食材に、季節の行事や言葉遊びを重ねた献立です。
料理に添えられる北嶋さんのお話も楽しみのひとつ。魚を獲った後の処理から、俳句や鎌倉の禅の文化まで。食べながら聞くことで、一皿の見え方が変わります。
お店について
鎌倉駅から徒歩15分ほど。大町にある日本料理店です。
築60年以上の古民家を改修した建物で、設計は京都の建築家・木島徹氏が手がけています。観光の中心地から少し離れ、食事のために足を運ぶ場所です。
漁師や魚屋、生産者、器の作り手など、一回の食事に関わる人たちの思いをつなぐことを大切にされています。今回伺った魚の処理の話にも、その姿勢が表れていました。

店主について
店主は北嶋靖憲さん。
京都「和久傳」で16年間経験を積み、同グループの「丹」では料理長を務めました。独立後は故郷の鎌倉に戻り、2021年5月に「鎌倉 北じま」を開業しています。
今回の献立では、相模湾の魚や鎌倉の野菜を使いながら、菊や月見を料理に取り入れていました。器や盛り付けだけでなく、料理に添える話にも季節があります。
京都で16年を過ごされたと聞いて、なるほどと思いました。食材の調理と、その料理をどう楽しんでもらうか。両方に気を配られていると感じます。

この日の料理
金木犀茶
始まりは金木犀茶。秋の献立を、お茶からいただきます。

柿、イバラガニモドキ、揚げ銀杏、鼈甲餡
くり抜いた柿を器に、イバラガニモドキと揚げ銀杏。上から鼈甲餡がかかっています。
柿の橙色と銀杏の色。下に敷かれた葉や紅葉も含め、秋らしい盛り付けです。柿を器として使いながら、料理の食材にもしています。

菊花ご飯
食用菊の「もってのほか」と胡麻だけを使った一品。菊の花の下にはご飯です。

鰹のお造り
この日の鰹は、刺身でいただきました。生臭さがなく、鰹そのものの味をしっかり楽しめます。藁焼きも好きですが、そのままの刺身でこれだけおいしくいただけたのが印象に残りました。
北嶋さんによると、業者が現地で神経締めをし、大量の氷で冷やすそうです。最初の氷水は血で染まるため、新しい氷水に移して、もう一度冷却するとのこと。
獲った後の丁寧な処理が、このおいしさにつながっているのだと感じました。

かんぱちのお造り
北嶋さんによると、かんぱちはよく暴れる魚で、現地での処理が悪いと雑味が出やすいそうです。鰹に続き、魚を獲った後の扱いについて伺いました。お造りのおいしさには、店に届く前の仕事も深く関わっているのだと感じます。

鴨肉入り月見団子のお椀
鳥の出汁に、鴨肉を入れた月見団子。丸い団子を月に見立てています。月見という行事を、名前と形で献立に取り込んだお椀です。

子持ち鮎の揚げ焼き
子持ち鮎は揚げ焼きにし、手で持っていただく形で出てきました。

途中から梅ダレを合わせます。一尾を食べ進める中で、味を変えられるようになっています。

野菜と果物の白掛け
鎌倉野菜の小松菜、巨峰、南瓜、りんごを使った白掛け。巨峰には甘酢。南瓜は甘く炊き、りんごは米粉を使って揚げています。

落花生豆腐、栗、万願寺とうがらしの天ぷら
大粒の落花生「おおまさり」を使った落花生豆腐。それを天ぷらにしています。栗の渋皮煮と、鎌倉野菜の万願寺とうがらしも。揚げ落花生と淡雪塩が添えられます。

月とすっぽん
すっぽん出汁の玉子豆腐に、天然きのこを合わせた料理です。玉子豆腐は月の形。料理名の「月とすっぽん」が、そのまま器の中にあります。

食事
締めは、さばやうすばはぎに、ミンククジラのラーメン。クロシビカマスの炊き込みご飯、梅の雑炊まで続きます。


炊き込みご飯は、炊き上がった土鍋を見せてからよそってくださいます。普段はあまり口にしない魚を、ご飯でいただけるのも面白いところです。


赤出汁には蕪と茎わかめ。香の物はコリンキー、万願寺とうがらし、小芋のこのこまぶしでした。

料理だけでなく、食事も品数が豊富。最後までいろいろなものを少しずついただきました。
甘味
いちじくと卵味噌、大福、薄茶。

甘味の時間にも、季節や禅にまつわるお話が続きます。食後まで会話を楽しみながら過ごしました。


Yummies View
京都「和久傳」で16年間経験を積まれたと聞き、納得する献立でした。
菊や月見を料理に取り入れ、器や盛り付けにも季節を映す。そこに相模湾の魚や鎌倉の野菜が使われています。京都で学んだ日本料理を、この土地の食材で作っているお店だと感じました。
特に記憶に残ったのは、鰹を冷やす工程の話です。
現地で神経締めをし、大量の氷で冷却する。最初の氷水は血で染まるため、替えてもう一度冷やす。こうした仕事は、皿を見ただけでは分かりません。説明を聞くことで、料理人だけでなく、その前に魚を扱った人の仕事まで知ることができます。
北嶋さんのお話は、調理の説明だけにとどまりません。俳句や月見、鎌倉の禅の文化へと広がります。料理をいただきながら、その背景も聞ける時間が楽しい。
季節を変えて、次の献立とお話を楽しみに伺いたい一軒です。






