代々木上原の日本料理店「茂幸」を再訪しました。
前回は春の花山椒の季節。
今回は9月下旬、松茸を中心とした秋の献立をいただきました。
お店について
2020年4月開業。代々木上原駅と幡ヶ谷駅のほぼ中間にあり、どちらからも徒歩6分ほどです。食べログでは「日本料理 TOKYO 百名店 2025」に選出されています。
店内はカウンターを中心とした落ち着いた空間。
白木一辺倒の端正な日本料理店とは少し違います。木や器に温かみがあり、店が掲げる「食の民藝」という言葉にも通じる雰囲気があります。店舗公式情報でも、関西で培った技と食の民藝を組み合わせた料理を掲げています。

店主について
店主は菅野茂男氏。
京都の「祇園丸山」や東京の「金田中」などを経て、「麻布 幸村」で長く経験を積んだ料理人です。2020年、代々木上原に「茂幸」を開きました。
料理をいただくと、関西料理をベースにした出汁や季節の扱いに、その経験が感じられます。
一方で、茂幸の料理は古典に寄りすぎません。切干大根を冷麦に合わせたり、鮑に滋賀の赤こんにゃくを添えたり。この日の松茸も、椀だけではなく鱧と合わせ、ご飯まで形を変えて登場しました。
しっかりした日本料理の土台があるからこそ、こうした少し意外な組み合わせも自然に成立しているように感じます。

この日いただいた料理
重陽の節句を意識した料理から始まり、後半は松茸を中心とした初秋のコースでした。

菊のお浸し
菊を使った季節の一皿からスタート。酢を効かせ、菊のほろ苦さと香りを生かした軽い仕立て。華やかに始めるというより、口の中を整えながら季節を示す一皿でした。

赤むつ|胡麻だれ・黄ニラ・山葵
脂のある赤むつに胡麻のコク。そこへ黄ニラと山葵を合わせます。濃厚な方向に振り切らず、香味野菜で輪郭を出していました。

里芋の唐揚げ
表面は香ばしく、中はねっとり。一見するとシンプルですが、食感の差が明確。コースの中で少し温度を上げるような一品です。

白いか|いくら・黄身醤油
白いかの甘みを中心にした一皿。いくらと黄身醤油でコクを加えていますが、味を重ねすぎません。白いかの柔らかな食感が残ります。

松茸のお吸い物
ここから松茸が本格的に登場。この日使われていたのは、立派な富士山麓の松茸。最初は椀で香りを素直に楽しみます。


松茸と鱧
この日の印象に残った料理のひとつ。松茸をたっぷりと使い、鱧と合わせた料理です。断面を見ると、松茸の量がかなり多い。鱧の淡い旨みの中に松茸の食感と香りが入り、松茸だけを焼いて食べるのとは違う面白さがあります。


鮑|滋賀の赤こんにゃく
鮑に滋賀の赤こんにゃくを合わせた一皿。鮑という上質な食材に、土地の郷土食材を組み合わせるところが面白い。料理を高級食材だけで組み立てていないことが分かります。

お凌ぎ|冷麦・切干大根
途中のお凌ぎは冷麦。切干大根を組み合わせ、麺だけでは出ない食感を足しています。コース後半に向かう前の、軽い切り替えになっていました。

鴨と無花果
秋らしい鴨と無花果の組み合わせ。鴨の脂と無花果の甘み。定番の相性ですが、果実の甘さに寄りすぎず、料理としてまとまっています。

松茸ご飯
締めは松茸ご飯。


むかご・新銀杏のご飯
むかごと新銀杏のご飯も一緒に。むかごの土っぽい風味や銀杏のほろ苦さまで含めて、初秋を感じるご飯でした。


桃のアイス
最後は桃のアイス。松茸や鴨まで続いた後なので、果物の軽い甘さで締めるのがちょうどよい。

この日いただいた日本酒
伯楽星 純米吟醸

上喜元 極辛 純米大吟醸

黒龍

Yummies View
茂幸は今回が2度目。
前回は昨年の春、花山椒の季節でした。
今回は9月下旬。重陽の菊から始まり、松茸、無花果、新銀杏、むかごへ。春とはまったく違う表情でした。
この日の主役はやはり松茸。
富士山麓の立派な松茸を、椀、鱧との組み合わせ、そして松茸ご飯まで、形を変えながら楽しませてくれました。
松茸を多く使うだけではなく、一皿ごとに食べ方を変えているので単調になりません。特に鱧と松茸の組み合わせは印象に残りました。
二度訪れて改めて感じたのは、料理の土台の強さです。
菅野さんが「麻布 幸村」などで積んできた経験が、出汁や火入れ、季節の組み立てにしっかり生きているように感じました。食べログ
その上で、料理を堅くしすぎない。
鮑と赤こんにゃく、冷麦と切干大根など、少し意外な組み合わせも入ります。奇をてらった感じではなく、食べると自然にまとまっています。
昨年春の花山椒。今回の松茸。季節を変えると、また違う茂幸が見える。
次に来る季節も楽しみになる日本料理店です。






