鮨さいとうの系譜で研鑽を積んだ大将が独立したと聞き、開業間もない時期に訪問しました。

鮨さいとうの流れを受け継ぎながら、どのような鮨を握るのか。以前から興味があったお店です。

お店について

広尾駅、恵比寿駅の双方から徒歩10分圏内。住宅街にあるビルの2階に店を構えています。

店内は白木のカウンター8席。照明を控えめにした落ち着いた空間で、目の前の料理や握りに自然と目が向きます。

大将の仕事を間近で見ながら、ゆっくりと鮨を楽しめる造りです。接客は穏やかで、必要以上に会話へ踏み込まない自然な距離感。

鮨を食べ慣れた様子のお客さんが中心で、カウンター全体にも落ち着いた雰囲気がありました。

大将について

大将は小林郁哉氏。「鮨さいとう」で約15年にわたり研鑽を積み、香港店の立ち上げにも携わった。香港では大将を務め、帰国後は「鮨さいとう はなれ」などで経験を重ねた。2025年10月、広尾に自身の店「鮨こばやし」を開業しました。

この日の鮨は、派手な演出よりも、ネタの仕込みとシャリのバランスを大切にするスタイル。シャリも最初から強く主張せず、食べ進めるにつれて旨味と塩味が感じられる。個々のネタだけでなく、コース全体のまとまりを意識した仕事だと感じました。

接客は穏やかで、必要以上に踏み込まない自然な距離感。カウンター全体に目を配りながら、一貫ずつ丁寧に握る姿が印象に残りました。

この日のおまかせ

白身魚のお出汁

白身魚の出汁からコースが始まります。
澄んだ出汁に魚の旨味が感じられ、食事の始まりにふさわしい一杯でした。

厚みを持たせて切られた鮑に、塩、わさび、肝と思われるペーストを添えた一皿。
鮑そのものを味わえるシンプルな盛り付けで、調味料を使い分けながら楽しむ構成です。

さばの海苔巻き

さばを海苔で包み、胡麻を添えた一品。
脂の乗ったさばと海苔の風味がよく合い、握りとは異なる形で楽しませてくれます。

ほたるいか

3杯のほたるいかを串に刺して提供。
ほたるいか特有の濃厚な旨味があり、序盤のつまみの中でも印象に残りました。

あん肝

あん肝と思われる一品。わさびを添えて提供されました。
濃厚な旨味を楽しむ、つまみらしい一皿です。

太刀魚

皮目を香ばしく焼いた太刀魚。
塩、わさび、梅肉と思われる薬味が添えられています。脂の乗った太刀魚に薬味を合わせることで、味わいに変化をつけながらいただけます。

ここから握りへ。

かすごだい

握りの最初に登場したかすごだい。淡い色合いの身をシャリに合わせた、端正な仕上がりです。

こはだ

天草産のこはだを一日寝かせたもの。酢の角が取れ、脂と酸味が自然になじんでいます。
こはだは仕込みの違いが表れやすいネタですが、こちらは全体のまとまりがよく、丁寧な仕事が感じられました。

ひらめ

朝締めのひらめ。雑味のないすっきりとした味わいで、白身の持ち味が素直に伝わってきます。

赤身

勝浦産の鮪。鮪本来の旨味がしっかりと伝わる一貫。この日の握りの中でも、特に完成度が高いと感じました。

中トロ・大トロ

赤身に続いて中トロ、大トロへ。
脂の強さを前面に押し出すのではなく、口の中でほどける質感を楽しませる仕上がりです。

あおりいか

細かく包丁を入れたあおりいか。包丁の仕事によって生まれる柔らかな食感が印象的で、シャリとの一体感もよい。

あじ

皮目を生かしたあじに、薬味を少量添えた握り。あじの旨味に薬味が加わり、味わいを引き締めています。

えび

美しい赤色が印象的なえび。身をシャリに沿わせるように握られ、見た目にも整った一貫です。

うに

たっぷりのうにを使った軍艦。濃厚な旨味がありながら、重たさを感じさせない仕上がりでした。

赤貝

赤貝もコースで登場。

穴子

ふっくらと仕上げた穴子を、折り重ねるように握った一貫。甘さを強く出しすぎず、穴子の旨味を生かした仕上がりです。

味噌汁

握りを終えたところで味噌汁。ねぎを散らした、落ち着いた仕上がりです。

玉・巻物

玉と巻物でコースを締めくくります。

追加:とろたく

最後にとろたくを追加しました。
鮪の脂とたくあんの組み合わせ。食感と旨味を楽しみながら、食事を締めくくりました。

この日のお酒

日本酒は「澤の花 辛口純米」と「十勝 純米」をいただきました。澤の花は長野県、十勝は北海道の日本酒。つまみから握りへと進むコースに合わせ、日本酒も楽しみました。

Yummies View

4.0 / 5

開業間もない時期の訪問でしたが、コース全体の完成度は高いと感じました。

出汁から始まり、鮑、さば、ほたるいか、太刀魚と続くつまみ。その後、白身から鮪、貝類、穴子へと進む握りの流れも自然です。
特に印象に残ったのは、こはだと勝浦の赤身。丁寧な仕込みによって素材の持ち味が引き出され、シャリとのバランスもよく取れていました。

大将の穏やかな接客も好印象。白木のカウンターを中心とした落ち着いた空間で、じっくりと鮨を楽しめます。

価格とのバランスにも納得感があり、開業間もない段階でこれだけの完成度があるのは見事だと思います。

私自身、香港に駐在していたこともあり、香港店での経験にも興味がある。次回は、現地でどのような鮨を提供していたのか、ぜひお話を伺ってみたい。

今後の変化も楽しみな一軒です。