長らく訪問を心待ちにしていた、日本橋のスペイン料理店「aca(アカ)」。
京都時代から高い評価を受け、2020年に東京・日本橋へ移転した名店です。
スペイン料理を軸に、日本の旬の食材を取り入れた東鉄雄シェフの料理。今回ようやくいただくことができました。
期待していた以上に印象に残ったのは、食材の組み合わせと火入れの巧みさ。そして、最後のパエリアまで自然に食べ進められるコースの構成でした。
お店について
acaは、東鉄雄シェフが2013年に京都で開いたスペイン料理店です。
2017年版から4年連続でミシュラン一つ星を獲得。2020年8月、日本橋室町の三井二号館に移転しました。
スペイン料理の伝統を大切にしながら、日本の魚介類や野菜、山菜などを積極的に取り入れています。
京都時代からの看板料理であるパエリアも、季節の食材によって内容が変わります。

日本橋の店舗は完全予約制。料理人の仕事を間近に感じながら、コースを楽しむことができます。

シェフについて
東鉄雄(あずま てつお)シェフ。
2013年に京都でacaを開業し、現在は日本橋のacaを率いています。
東シェフの料理は、スペイン料理の技法を土台にしながらも、必ずしもスペインの食材や伝統的な組み合わせにとらわれません。
今回のコースでも、コハダ、金目鯛、稚鮎、フカヒレ、毛蟹など、日本料理で親しみのある食材が次々に登場しました。
それらがボカディージョ、アヒージョ、パエリアといったスペイン料理に自然に取り込まれています。
特に印象的だったのは火入れです。魚の皮目の香ばしさと身の水分、肉の柔らかさと脂の扱いなど、食材ごとに仕上げ方が異なります。
華やかな組み合わせだけに頼らず、素材そのもののおいしさをしっかり引き出しているところに、東シェフの技術を感じました。

この日の料理
スナップエンドウのカルドソとスモークバター
最初に登場したのはスモークバター。
燻製の香りが広がり、料理への期待が高まります。
スナップエンドウのカルドソは、バターをつけたスプーンでいただきます。
青々とした豆の風味に、スモークバターの香りとコクを重ねる組み合わせ。
コースの始まりから印象に残る一皿でした。


コハダのボカディージョ
acaのシグネチャー料理。
スペインのサンドイッチであるボカディージョに、コハダを合わせています。
パンの香ばしさに、コハダの旨みと酸味。ディルの爽やかな香りもよく合います。
日本では鮨でいただくことの多いコハダですが、パンとの相性のよさを感じます。
食材の組み合わせに無理がなく、完成度の高い一品でした。

薪焼きの金目鯛
今回、特に印象に残った魚料理です。
薪火で焼き上げた金目鯛は、皮目が香ばしく、身は水分をしっかり残した仕上がり。
山菜やハーブの香りが加わり、脂のある金目鯛を軽やかにいただけます。
薪焼きの香りが強すぎず、魚の旨みを引き立てているところもよかったです。

稚鮎のフリット
稚鮎をフリットにし、ビネガーと削ったホエイを合わせた一皿。
稚鮎のほろ苦さにビネガーの酸味がよく合います。
ホエイの風味も加わり、揚げ物でありながら重さを感じさせません。
季節の食材をスペイン料理の技法で仕上げた、acaらしい料理でした。

ホワイトアスパラガスとアホブランコ
スペインの冷製スープ、アホブランコとホワイトアスパラガスの組み合わせ。
アスパラガスは火入れによって甘みが引き出され、ほのかな苦味も残っています。
アホブランコのナッツ由来のコクが、その甘さとよく合います。
シンプルな組み合わせですが、食材の持ち味を丁寧に引き出した一皿でした。

フカヒレと海老のアヒージョ風
この日の料理の中でも、特に個性的だった一品です。
フカヒレと海老をアヒージョ風に仕立てています。
スペイン料理の調理法に、中華料理で使われるフカヒレを組み合わせた発想が面白い。
海鮮の旨みがオイルに移り、濃厚な味わいに仕上がっています。
素材の組み合わせだけでなく、香りや食感の変化も楽しめました。

黒毛和牛ヒレと焼き芋
肉料理の一皿目は黒毛和牛のヒレ。
ブロック状に切り分けられた肉は、柔らかく、赤身の旨みを感じる火入れです。
ワインソースのコクと焼き芋の甘みが、牛肉によく合います。
脂の強さではなく、赤身のおいしさを楽しむ料理でした。

神戸牛サーロイン(かぶり)
続いて神戸牛のサーロイン。
こちらは塩と胡椒というシンプルな味付けです。
先ほどのヒレとは異なり、脂の旨みが前面に出ます。
赤身と脂のバランスがよく、余計なソースを加えずに肉そのものを味わう構成。
同じ牛肉でも、二皿で異なるおいしさを楽しめました。




毛蟹のパエリア
コースの締めは毛蟹のパエリア。
東シェフ自らサーブしてくださいました。
毛蟹の旨みを含んだ米に、レモンの爽やかな酸味を合わせます。
二皿の肉料理の後ですが、不思議と重さを感じません。
acaを代表する料理として、長年支持されてきた理由がわかる気がしました。
スペイン料理店でパエリアをいただくことは珍しくありませんが、ここまでコースの流れに自然に組み込まれているところが印象的でした。


デザート3品
最初は氷の上にのせられたメロン。
肉料理とパエリアの後に、口の中をさっぱりと整えてくれます。

続いて富山県産の山羊ミルクを使ったアイスクリーム。
オリーブオイルとピスタチオを合わせたもので、ミルクの風味にナッツのコクと塩味が重なります。
甘さだけではない、面白い組み合わせでした。

最後はブラジル産チョコレートを使ったガトー。
ナッツやドライフルーツがアクセントとなり、コースを締めくくります。


この日いただいたお酒







Yummies View
Yummies View
長らく訪問を楽しみにしていたacaですが、期待を上回る内容でした。
特によかったのは、料理の火入れとコースの構成です。
金目鯛は皮目を香ばしく焼きながら、身の水分を残す。黒毛和牛のヒレは柔らかく仕上げ、神戸牛のサーロインは脂の旨みを生かす。
食材の特徴を理解したうえで、それぞれに適した調理がされています。
もう一つは、スペイン料理と日本の食材の組み合わせです。
コハダのボカディージョ、稚鮎のフリット、フカヒレと海老のアヒージョ。
意外性はありますが、食べてみると自然にまとまっています。
料理の流れもよく考えられていました。金目鯛から稚鮎、ホワイトアスパラガスへと進み、濃厚なフカヒレ、二種類の牛肉を経て毛蟹のパエリアへ。
皿数も多く、しっかりとした料理が続きますが、最後まで飽きることなく楽しめました。
東シェフが自らパエリアをサーブしてくださるのもうれしいところです。
日本橋には優れた日本料理店や鮨店が多くありますが、acaはスペイン料理という別の切り口から、日本の旬の食材のおいしさを感じさせてくれます。
季節を変えて、ぜひ再訪したい一軒です。






