神戸・北野の「Ca’ sento(カセント)」を訪れました。

日本の旬の食材を中心にしながら、料理の背景には福本伸也シェフがイタリア、スペインで積み重ねてきた経験があります。

ただ、現在の料理を「スペイン料理」と一言で括るのは少し違うように感じます。

山芋、鯵、鱧、すっぽん、ハタ。この日使われていた食材は日本の夏そのもの。

そこに酸味、香り、油脂、温度、食感を重ねながら、一皿ずつ福本シェフの料理に変えていきます。

料理数の多い長いコースでしたが、最後まで同じテンションで押すのではなく、強弱をつけながら進んでいくのも印象的でした。

お店について

Ca’ sentoがあるのは神戸市中央区中山手通。

地下鉄の県庁前駅から歩いて5分ほど。三宮や元町の中心から少し離れた、落ち着いたエリアです。

黒を基調とした入口から中へ入ると、外観以上に静かな空間が広がります。

木や石を使った内装に、抑えた照明。

テーブルの間隔にも余裕があります。

料理が運ばれ、説明を聞き、食べ終えると少し間がある。

長いコースですが、そのテンポも含めて落ち着いて食事ができます。

シェフについて

Ca’ sentoを率いるのは福本伸也シェフ。

若くしてヨーロッパへ渡り、イタリアで経験を積んだ後、スペインへ。

バスクの「Mugaritz」、バレンシアの「Ca Sento」などで研鑽を重ね、現地でも厨房を任されました。

帰国後、神戸で自身の店を開業。

店名の「Ca’ sento」には、スペインで過ごした店への敬意も込められています。

この日の料理

この日は夏の食材を中心にしたコース。

日本の夏の食材として馴染みのあるものが使われていますが、組み合わせと見せ方にはCa’ sentoらしい独自性があります。

それでも、一皿ごとの量を抑え、温度や食感、味の強さを変えながら進むため、単調にはなりません。

カセントこの日のメニュー

山芋、リコッタ、フィンガーライム

最初は山芋、リコッタチーズ、フィンガーライム、アンチョビ。

山芋の食感にリコッタのコク。

そこへフィンガーライムの細かな酸味と、アンチョビの塩味が入ります。

一つひとつは分かりやすい食材ですが、口に入れた時の食感と味の動きがおもしろい。

これから始まるコースの方向性を見せる一皿でした。

チョリソー、トマト、黒トリュフ

小さなタルトに、チョリソー、トマト、黒トリュフ。

サイズは一口ですが、香りと旨味はしっかりしています。

トリュフの香りだけを前に出すのではなく、チョリソーの旨味とトマトの酸味が重なる。

小さい料理の中に複数の要素を収めています。

とらはぜのフリット

とらはぜは軽いフリットに。

モロヘイヤと島唐辛子を合わせます。

衣は軽く、魚の味を残した仕上がり。

島唐辛子の刺激も強くしすぎず、モロヘイヤと合わせて夏らしくまとめています。

トマト

トマトはムースに仕立てた一皿。

身近な食材ですが、形を変えることで甘味と酸味がよりはっきりします。

複雑な食材を使うのではなく、よく知っている味を別の角度から見せる。

こうした料理もCa’ sentoには多く出てきます。

すっぽんのコンソメ

この日、特に印象に残った一皿の一つ。

澄んだコンソメには、すっぽんの旨味がしっかり出ています。

中には素麺と白ねぎ。

見た目は非常にシンプルです。

一方、口にすると味には深さがあります。

多くの素材を重ねる料理が続く中で、ここでは要素を絞る。

派手さではなく、スープそのものの完成度で食べさせる一皿でした。

カレイ

カレイは米粉のロールで包み、新生姜とわさびを合わせます。

淡白な白身に、米粉の食感。新生姜とわさびが香りと刺激を加えます。

魚の繊細さを残しながら、食感で変化を付けた料理です。

この日のベストディッシュは鯵でした。

脂の乗った鯵に柚子胡椒。

万願寺とうがらしの甘さとほろ苦さ、そこにオイルのコクが重なります。

鯵には十分な脂がある。

そこへさらに旨味を足すのではなく、柚子胡椒の香りと万願寺とうがらしの苦味を入れることで、全体のバランスを取っています。

それぞれの食材の味が分かりながら、一緒に食べると一つの料理になる。

この日の中で、最も完成度が高いと感じた一皿でした。

鱧のタルト

鱧にはいちじく、生ハム、山わさび。

鱧という日本の夏らしい食材に、いちじくの甘さと生ハムの塩味を組み合わせます。

山わさびの香りが最後に残ります。

和食では見ない組み合わせですが、鱧の繊細さは消していません。

ハタ

ハタは火入れが印象的でした。

身はしっとりとして、魚の水分をきれいに残しています。

合わせるのは根セロリ、オクラ、マルサラワインのソース。

ソースには厚みがありますが、ハタの味を覆いません。

メインは鳩。

皮目を香ばしく焼き、中はしっとり。

ここまで魚や野菜を中心に進んできたコースの中で、味の強さが一段上がります。

凝縮した肉の旨味を中心に置いた、比較的ストレートな料理でした。

土鍋のリゾット

締めは魚介のリゾット。土鍋で提供されます。

米が魚介の旨味をしっかり吸っています。

長いコースの最後ですが、締めの料理として満足感があります。

ここまで細かな構成の皿が続いた後に、最後は米と魚介の旨味という分かりやすいおいしさに戻る。

この流れも良かったです。

デザート

デザートも一皿では終わりません。

桃、スイカ、プラム、牛乳、カカオ。夏の果物を中心に、温度と食感を変えながら続きます。

桃のムース

桃の甘さを中心にした軽いムース。

スイカとクリームチーズ

スイカはジュレにして、クリームチーズを合わせます。

水分の多いスイカに乳製品のコクを加えることで、デザートとしての厚みを出しています。

プラムとマスカルポーネ

プラムの酸味にマスカルポーネ。

果物の酸味と乳製品のコクという分かりやすい組み合わせです。

牛乳のアイスとカカオ

最後は牛乳のアイスとカカオ。

甘さを強く残さず、長いコースをすっきり締めます。

料理からデザートまで皿数はかなり多いですが、最後まで重く感じさせない構成でした。

Yummies View

4.0 / 5

Ca’ sentoで印象に残ったのは、日本の旬の食材を、福本シェフ自身の感覚で組み立てていることです。

山芋、すっぽん、鯵、鱧、ハタ。

馴染みのある食材でも、仕立て方が変わるとまったく違う表情になります。

中でも印象に残ったのは、すっぽんのコンソメと鯵。

すっぽんのコンソメは、見た目は静かですが、旨味に深さがあります。

鯵は、柚子胡椒、万願寺とうがらし、オイルを合わせながら、それぞれの味を残して一皿にまとめていました。

一方で、食材の組み合わせに意外性がある分、料理によっては少し要素が多く感じる場面もありました。

それでも、火入れやソース、素材の扱いには技術の高さを感じます。

スペイン料理やイタリア料理という枠よりも、日本の旬をどう料理に落とし込むか。

そこにCa’ sentoらしさがあると思います。

季節を変えて、また訪れてみたい一軒です。