待ちに待った「温石」を訪問しました。
向かう途中、メディアで見ていたサスエ前田魚店の前を通りました。温石との距離感が実際にわかり、なんだかうれしくなります。これから始まる食事が、ますます楽しみになりました。
お店について
店内は凛としていながら、温かみのある空間です。木のカウンターに腰を下ろすと、ようやく来られたという実感が湧いてきました。
この日、心に残ったのは、静岡の魚介の旨みを引き出す料理でした。華美な食材や意外な組み合わせに頼らず、一つひとつをおいしく食べさせてくれる。その実直さが印象に残っています。


大将について
店主は杉山乃互(すぎやま・だいご)氏。1984年、焼津生まれ。祖父母が始めた蕎麦店を、父の代に茶懐石「温石」へと発展させ、杉山氏が二代目店主として受け継いでいます。
高校卒業後は、父も修業した東京・目白の茶懐石「和幸」で6年間研鑽。24歳で焼津に戻り、父とともに温石の厨房に立ちました。
杉山氏を語るうえで欠かせないのが、サスエ前田魚店の前田尚毅氏との関係です。杉山家とサスエ前田魚店との付き合いは祖父の代から3代にわたります。杉山氏自身も高校時代からサスエ前田魚店で魚の扱いを学び、焼津に戻ってからは前田氏を「魚の師」として、魚の仕込みや焼き方を研究してきました。
東京から戻った当初は、地方の店が東京の名店にかなうのは難しいと考えていたそうです。その意識を変えたのも、焼津から全国の一流料理人に魚を届ける前田氏の存在でした。「焼津でも都会に負けない店を作れる」と考えるようになり、地元の魚を軸に温石の料理を磨いていきます。
実際に料理をいただくと、この背景がよく分かります。華美な食材を重ねたり、技巧を強く見せたりする料理ではありません。魚の状態を見極め、必要な仕事だけを加える。味付けも必要以上に強くしない。サスエ前田魚店の魚を使うこと自体を売りにするのではなく、その魚をどう料理として完成させるかに杉山氏の仕事があるように感じました。
焼津でしか作れない日本料理を、地道に突き詰めている料理人。今回の温石で最も印象に残ったのは、料理の完成度とともに、そんな杉山氏の姿勢でした。

この日いただいた料理
鯵の砧巻き、大浦ごぼう
食事は鯵の砧巻きと大浦ごぼうから始まりました。

アスパラとタイラ貝、アスパラの流し
続いて、アスパラとタイラ貝。そして、アスパラの流し。同じ野菜を違う仕立てでいただきます。
お酒は、磯自慢とタイアップした温石ブランドの日本酒を合わせました。


鯛、わさび、じゃがいもの酢漬け
鯛には、わさびとじゃがいもの酢漬け。魚に添えられたじゃがいもの使い方も、記録に残しておきたい組み合わせです。

根深ねぎのおかき揚げ
野菜の料理も続きます。根深ねぎは、おかきを衣にした揚げ物でいただきました。

白ミル貝の炙り、玉ねぎソース
白ミル貝は炙り、玉ねぎのソースとともに。魚だけでなく、貝も調理を変えながら献立に組み込まれています。


蛤のおじや
蛤はおじやでいただきました。貝の身に加え、出汁も味わう一品です。

春菊と蒸したえぼ鯛
えぼ鯛は蒸して、春菊と合わせて。炙りや蒸し物など、それぞれの魚介に合わせた調理が続きます。

しいたけの炭火焼き
しいたけは炭火焼きで。魚介の合間に、野菜やきのこを一品としていただく構成でした。

金目鯛、煮山椒醤油
金目鯛には煮山椒醤油を合わせて。鯛、えぼ鯛、金目鯛と、魚ごとの違いを楽しめる献立です。


知床牛、白菜、蓮根団子の鍋仕立て
魚介の後は知床牛を。
鍋で煮た白菜と蓮根団子に牛肉を合わせ、わさびを添えた一品でした。





筍ご飯
鍋の表面を覆うほど、筍がたっぷり入っています。盛り付けたご飯には絹さやが添えられ、見た目にも春らしい一膳でした。


玉どん
筍ご飯に続いて、お肉と蛤の出汁を使った玉どんもいただきました。
ご飯を覆う、とろりとした卵。締めのご飯が二種類あるのもうれしく、最後まで楽しみが続きました。

いちごと春菊餅
最後は、静岡のいちご「きらぴ香」と春菊餅。
料理に登場した春菊を、甘味でもいただきました。




Yummies View
静岡の魚介のおいしさに、素直に感動した食事でした。
華美な食材を並べることも、奇をてらうこともない。それでも、これだけ心に残る。食材の旨みを引き出す技術の確かさを感じました。
魚介を中心に、アスパラ、根深ねぎ、しいたけ、筍と、野菜もきちんと印象に残る献立です。料理から締めのご飯、甘味まで、食事全体に満足しました。
凛としながらも温かみのある空間で、楽しみにしていた料理をいただく。待ち望んでいた甲斐がありました。
次の予約が、今から楽しみです。






