銀座の日本料理店「蓮 三四七」へ。
一皿ごとに意外性がありながら、コースを通して食べると流れがきれいにつながっている。三科さんの想像力と、細部まで考えられた構成が印象に残る食事でした。
お店について
銀座7丁目、ニューギンザビルの地下にある「蓮 三四七」。
店主の三科純氏は「神楽坂 石かわ」を経て、小泉瑚佑慈氏と「虎白」の立ち上げに参加。その後、2009年に神楽坂で「蓮」を開き、2018年に銀座へ移転しています。公式サイトでも「食材の持つ旨味を最大限引き出す」ことを料理の軸として掲げています。
カウンターは6席。目の前で料理が仕上がっていく距離感も、この店の魅力です。
三科さんの所作は静かで無駄がない。器の使い方まで含め、一皿をどう見せるかがよく考えられています。

店主について
三科純氏は1983年、神奈川県出身。
「神楽坂 石かわ」で経験を積み、「虎白」の立ち上げにも参加した料理人です。2009年に自らの店「蓮」を開きました。
料理を食べて感じるのは、石かわの流れにある丁寧な仕事を土台にしながら、その上でかなり自由に料理を組み立てていること。
奇抜さを狙うのではなく、素材をどう食べさせればおいしいかを考えた結果として、少し意外な組み合わせが出てくる。
そこが三科さんの料理のおもしろさだと思います。

この日の料理
鱒と木の芽の飯蒸し
コースの始まりは、酢締めした鱒をのせた飯蒸し。
鱒のやわらかな脂に酢の酸味を効かせ、温かなもち米と合わせています。木の芽の香りが間に入り、最初の一皿として軽やかな仕上がりです。

城下鰈とキタムラサキウニ
城下鰈は厚めに切られ、淡白ながらしっかりとした旨みと弾力があります。そこにキタムラサキウニの甘みとコクを合わせる構成。山葵を添え、素材の味をそのまま楽しませます。

伊勢海老と山菜
伊勢海老は中心をレア気味に残した火入れ。
身の弾力と甘みがしっかりあり、山菜のほろ苦さがアクセントになります。

湯葉の炊き物
幾重にも重なった湯葉を、澄んだ出汁で。
とろりとした口当たりと大豆の穏やかな甘み。ここまでの華やかな料理から一度落ち着かせるような一皿です。

新玉ねぎの炊き物
新玉ねぎを丸ごと使った一皿。
火を入れることで玉ねぎの甘みをしっかり引き出しながら、食感は崩しすぎない。出汁をたっぷり含んだ玉ねぎは、箸を入れるとやわらかくほどけます。
玉ねぎそのものは非常にシンプルな食材ですが、ここまで主役として成立させるのはおもしろい。
濃い味を重ねるのではなく、出汁の旨みで玉ねぎの甘さを引き出す。三科さんらしい料理だと思いました。

山菜の天ぷら
薄い衣で軽く揚げた山菜。
春らしい苦みと香りを残しながら、油の重さを感じさせません。
大根おろしと合わせることで後味も軽い。
このあたりのコースの緩急が上手です。

和牛とトマト
焼いた和牛に、トマトというシンプルな組み合わせ。
和牛は外側を香ばしく焼き、中はしっとりとした火入れ。脂のある肉にトマトの酸味と水分を合わせることで、思った以上に軽く食べられます。


桜海老の土鍋ご飯
蓋を開けると、表面を覆うほどたっぷりの桜海老。
炊き上がった米の香りに、桜海老の香ばしさと甘みが重なります。
この日の料理の中でも特に印象に残った一品でした。

牛肉の煮込みと白ご飯
土鍋ご飯の後には、牛肉を使った濃いめの味の一品。



やわらかな牛肉と醤油を軸にした煮汁は、白いご飯との相性を考えた味付けです。
料理単体というより「ご飯をどう食べさせるか」まで設計されています。
カレー
締めにはカレー。
日本料理のコースで突然カレーが出てくるおもしろさがありますが、味は重くありません。
出汁を感じるさらりとした仕立てで、コースの最後でも自然に入ります。

甘味
最後は寒天に黒蜜。
華美なデザートではなく、口の中をすっきりさせて終了。
最後までコースの流れが崩れません。

この日のお酒
この日は富山・清都酒造場の「勝駒 純米酒」をいただきました。
派手さはなく、米の旨みを感じながら後口はきれい。料理の味を覆わないので、出汁を軸にした日本料理との相性がとても良い日本酒でした。


この店で特に印象に残ったのは、一皿だけを強く見せるのではなく、コース全体をどう食べ進めてもらうかがよく考えられていること。
鱒から始まり、うに、伊勢海老、湯葉、山菜へ。
後半は和牛とトマトからご飯へ入り、桜海老、牛肉、最後はカレー。
日本料理の基本から外れているように見える料理もありますが、実際に食べると不自然さがありません。
三科さんの想像力はかなり自由。それを成立させる技術と、コースをまとめる構成力があります。
カウンター越しに見る流れるような仕事も心地よい。
「石かわ」で培った土台の上に、三科さん自身の料理がはっきりとある。
また季節を変えて食べてみたいと思わせる日本料理店でした。