人形町の日本料理店「礒田」を訪れました。

毛蟹、冬瓜、とうもろこし、鮎、枝豆。この日は、夏の食材を使ったおまかせコースをいただきました。

特に印象に残ったのは、出汁を味わう料理と、締めのご飯です。魚と冬瓜の葛餡から、車海老のお椀、野菜の炊き合わせへ。同じ出汁を使う料理でも、食材や仕立てによって違うおいしさがありました。

最後は白ご飯にお供を合わせ、卵かけご飯やすっぽんの出汁茶漬けまで。ご飯の時間も楽しめる一軒です。

お店について

人形町駅から徒歩数分。ビルの中にある日本料理店です。

店内は白木のカウンターを中心とした、落ち着いた空間。目の前で料理が仕上がっていく様子を眺めながら食事を楽しめます。

鮎は焼く前に見せていただきました。これから口にする食材を見て、焼き上がりを待つ。こうした時間も、カウンターでいただくよさだと思います。

今回はOMAKASEで事前に予約しました。

店主について

店主は礒田岳人氏。大阪の日本料理店で約2年働いた後、「新ばし星野」で約8年間修業し、2021年4月に人形町で独立しました。

ご本人のインタビューによると、星野での最初の5年間は、大将と二人で店を切り盛りしていたそうです。料理を教わるだけでなく、試作や試行錯誤を間近で見られたことが、大きな経験になったと語っています。

受け継いでいる料理として挙げているのが、煮炊きものとお椀です。一皿に複数の食材を盛る際は、それぞれの味の濃さを変え、全体の釣り合いを取る。そうした考え方を大切にされています。

この日の料理でも、出汁だけが強く残ることはなく、魚や野菜の味を一緒に楽しめました。特に冬瓜や茄子の料理に、店主の仕事がよく表れていたと思います。

この日の料理

毛蟹と海藻

最初は毛蟹と海藻を合わせた一皿です。蟹の甘みに、海藻の食感が加わります。すっきりとした味わいで、最初から口が重くならないのがよい。夏のコースの始まりに合っていました。

甘鯛と冬瓜の餡仕立て

この日の中でも、特に印象に残った料理です。甘鯛と冬瓜に、なめらかな餡が絡みます。出汁のやさしい味わいがあり、冬瓜のみずみずしさも感じられました。

めいたがれい刺身

明石のめいたがれいをお刺身でいただきました。

とうもろこしの薄衣揚げ

とうもろこしは、山梨の「カンカン娘」。薄い衣で揚げてあり、噛むと甘みが広がります。衣の軽さがよく、とうもろこしそのものの味を楽しめました。

天然うなぎの地焼き

青森県・小川原湖の天然うなぎを地焼きで。蒸さずに焼き上げるうなぎです。日本料理のコースの中で、天然うなぎの地焼きをいただけるのも楽しみの一つでした。

北寄貝の唐揚げ、土佐酢添え

北寄貝は、内臓を付けたまま唐揚げにしたもの。土佐酢が添えられています。貝の身だけでなく、内臓まで味わう一品です。揚げ物に土佐酢を合わせるところも面白く、お造りとは違う食べ方を楽しめました。

鮎の焼き物

鮎は岐阜県の馬瀬川のもの。焼く前に見せていただきました。焼き上がりは皮が香ばしく、鮎らしいほろ苦さもあります。蓼酢を合わせながらいただくと、夏の日本料理を食べている実感が湧きます。

車海老、冬瓜、じゅんさいのお椀

車海老に冬瓜、じゅんさいを合わせたお椀です。海老の甘みと、冬瓜のやわらかさ。じゅんさいが加わり、口当たりにも変化があります。甘鯛の餡仕立てとは違い、こちらは澄んだ出汁を味わう料理。同じ冬瓜でも、仕立てが変わると印象が変わります。椀物のおいしさが記憶に残るコースでした。

賀茂茄子、石川芋、生きくらげの炊き合わせ

素揚げした賀茂茄子に、石川芋と生きくらげを合わせた炊き合わせです。茄子のやわらかさに、芋の食感が重なります。生きくらげも入り、一皿の中で食感の違いを楽しめました。

いちじくの白和え

いちじくは白和えでいただきました。果物を甘味としてだけでなく、コースの一品として楽しめるのも日本料理のよいところ。鮎や夏野菜とともに、この日の季節感を伝える料理でした。

料理に合わせた日本酒

日本酒は「日高見」「仙禽」をいただきました。この日は、蟹や貝から椀物、揚げ物、鮎まで料理が続きます。料理を食べながら日本酒を少しずつ合わせる時間も楽しめました。

締めのご飯

締めには、白ご飯と牛時雨、じゃこ、漬物などのお供が並びます。まずはそのまま食べ、次にお供と合わせる。

おかわりをして卵かけご飯にすることもできます。最後は、すっぽんの出汁をかけてお茶漬けに。同じ白ご飯でも、合わせるものによって食べ方が変わります。少しずつ試したくなるので、ご飯のためにお腹を空けておきたいところです。

料理を食べ終えた後も、ご飯でもうひと楽しみある。この締め方は印象に残ります。

万願寺とうがらし、新生姜のご飯も登場しました。

甘味をいただいて、コースは終了しました。

Yummies View

4.0 / 5

料理はかなり好みでした。新ばし星野の流れを感じる、実直で完成度の高い日本料理です。

特に印象に残ったのは椀物。出汁が食材の味を支え、魚や野菜それぞれのおいしさが伝わります。季節を変えて、またいただきたいと思いました。

一方で、この日の客層や雰囲気は、私には合いませんでした。

若いお客さんが多く、カウンターは想像していたより賑やかでした。締めのご飯では、おかわりの杯数で盛り上がる場面もありました。卵かけご飯を大きな音ですする方もいて、料理に気持ちを向けにくい時間がありました。

私はこうした日本料理では、もう少し落ち着いて味わいたいと思います。隣席との距離が近いカウンターでは、周囲の声や食べる音も居心地に関わります。

料理への満足度は高かったものの、この日の食事全体として4.0としました。料理がかなり好みだっただけに、惜しく感じました。