西麻布の三つ星フレンチ「レフェルヴェソンス」を訪問。生江史伸シェフが率いる、日本を代表するフランス料理店の一つです。

この日のコースは「Circle of life(生命の循環)」がテーマ。野菜、魚介、肉など、日本各地の食材を使いながら、自然と食のつながりを表現する内容でした。

料理をいただくだけでなく、食材を見せる演出やサービスも含めて楽しめるレストランです。

お店について

レフェルヴェソンスは2010年に開業。ミシュラン三つ星とグリーンスターを獲得しているフランス料理店です。

場所は西麻布の住宅街。店内に入ると、ゆったりとしたダイニングが広がります。白いテーブルクロス、窓の外に見える緑、テーブルに置かれた小さな花とキャンドル。席の間隔も十分にあり、落ち着いて食事を楽しめる空間です。

この店の特徴は、日本の食材を中心に据えた料理と、生産者とのつながりを大切にする姿勢です。料理にはフランス料理の技法を使いながら、茶懐石など日本の食文化も取り入れています。店が掲げる「一座建立」という考え方も印象的です。

料理人、サービススタッフ、生産者、そして客が一緒になって、その日の食事の時間をつくる。料理だけで完結しないレストランを目指していることが伝わります。

レフェルヴェソンス お店について

シェフについて

生江史伸シェフは1973年、神奈川県生まれ。慶應義塾大学在学中に料理の世界に関心を持ち、卒業後に料理人の道へ進みました。

北海道の「ミシェル・ブラス トーヤ ジャポン」、英国の三つ星レストラン「ザ・ファット・ダック」などで経験を積み、2010年にレフェルヴェソンスを開業しました。

ミシェル・ブラスは、自然や野菜を大切にする料理で知られるシェフ。一方、ザ・ファット・ダックは、科学的な発想を料理に取り入れることで知られるレストランです。

この二つの経験が、生江シェフの料理を考えるうえで興味深いところです。ただ、現在のレフェルヴェソンスで強く感じるのは、日本の食材へのこだわりです。高価な食材を並べるのではなく、蕪のような身近な野菜にも時間と手間をかけ、一皿の料理として仕上げる。生産者や環境への取り組みも、店の特徴になっています。

この日の料理

この日のメニューには「Circle of life」「Genesis of Civilization」「Forest to Ocean」「Earth」「Migration」「Unity」など、料理を通じて生命や自然を表現する言葉が並んでいました。

レフェルヴェソンス この日の料理

一献 野菜クリスプと豆腐サワークリーム

最初に登場したのは、色とりどりの野菜を花束のように盛り付けた一品。薄く仕上げた野菜のクリスプを、豆腐のサワークリームとともにいただきます。野菜の形や色を生かした、見た目にも楽しいスタートです。

レフェルヴェソンス 一献 野菜クリスプと豆腐サワークリーム

蛤のササニシキリゾット

貝殻を器に使い、目の前で火を入れて仕上げる料理。蛤とササニシキを使ったリゾットに、牡丹海老とみりん、エンドウマメと自家製キャビアを組み合わせています。貝の旨みや米の食感に、異なる食材の風味を重ねた一皿です。目の前で料理が仕上がる様子を見るのも楽しみの一つでした。

レフェルヴェソンス 蛤のササニシキリゾット
レフェルヴェソンス 蛤のササニシキリゾット

アルチザン野菜

大きな木製の器に盛られた、さまざまな野菜を見せていただきました。その後、透明な器に盛り付けられたサラダが登場。葉物野菜、根菜、ハーブなどを組み合わせています。

生の野菜だけでなく、火を入れた野菜も使われており、食感や香りの違いを楽しめます。多くの種類の野菜を一皿にまとめながら、それぞれの特徴を生かしているところが印象的でした。

レフェルヴェソンス アルチザン野菜
レフェルヴェソンス アルチザン野菜

蕪を複雑に火を入れて シンプルに

レフェルヴェソンスのスペシャリテ。開業以来、提供されている蕪の料理です。蕪に時間をかけて火を入れ、表面には香ばしい焼き色をつけています。皿には緑色のソースを細く引き、盛り付けはいたってシンプル。特別に高価な食材ではなく、身近な蕪を主役にする。素材そのものを大切にする、生江シェフの料理哲学がよく表れています。

レフェルヴェソンス 蕪を複雑に火を入れて シンプルに

石鯛の乳清ポシェ、サバイヨンソース、筍、山椒、春の山菜

魚料理は石鯛。乳清を使ってポシェした石鯛に、サバイヨンソースを合わせています。付け合わせは筍、山椒、春の山菜。しっとりと仕上げた魚に、泡状のソースと春の食材を組み合わせた一皿です。フランス料理の調理法に、日本の季節感を取り入れています。

レフェルヴェソンス 石鯛の乳清ポシェ、サバイヨンソース、筍、山椒、春の山菜

十勝ロイヤルマンガリッツァ豚を東京都檜原村のミズナラで焼いて

メインは北海道十勝のロイヤルマンガリッツァ豚。東京都檜原村のミズナラを使って焼き上げています。肉は美しいピンク色に仕上げられ、しっかりとした焼き色がついています。

赤ワインを使ったソース・オ・ヴァンルージュに、黒トリュフと牛蒡のピュレを合わせた構成。春の豆が彩りと食感を添えています。

肉の産地だけでなく、調理に使う薪の産地にもこだわっているところが興味深い一皿です。

レフェルヴェソンス 十勝ロイヤルマンガリッツァ豚を東京都檜原村のミズナラで焼いて

豚腿肉のラビオリ、紫蘇、コンソメ

肉料理の後には、豚腿肉を使ったラビオリが登場。サステナブルの観点から、端材の豚腿肉をラビオリというイタリア料理の形を取りながら、レフェルヴェソンスらしく蘇らせています。

レフェルヴェソンス 豚腿肉のラビオリ、紫蘇、コンソメ

アルチザンチーズ

レフェルヴェソンス アルチザンチーズ
レフェルヴェソンス アルチザンチーズ

食後には、木のボードに並べられたチーズを見せていただきました。青カビ、ハード、ソフトなど、さまざまな種類が用意されています。それぞれの特徴について説明を受けながら選びます。盛り合わせでは、熟成による香りや塩気、食感の違いを楽しめました。チーズを選ぶ時間も、コースの楽しみの一つです。

デザート

デザートには、八朔と甘夏、金柑花を使った一皿。乳清のムースに柑橘類や花を添え、緑色のソースで仕上げています。柑橘の酸味と乳清のムースを組み合わせた、爽やかな印象のデザートです。

レフェルヴェソンス デザート

小菓子

レモンとカモミールのシュー、落花生のフィナンシェ、ヘーゼルナッツのプチモンブランなど。小さな焼き菓子やチョコレートが、三つの木製の器に並べられています。見た目にも楽しく、食事の最後まで細やかな仕事を感じました。

レフェルヴェソンス 小菓子
レフェルヴェソンス 小菓子
レフェルヴェソンス 小菓子

いただいたお酒

この日は日本酒とワインをいただきました。

日本酒は、石川門の名が入った銘柄。

ワインはブルゴーニュ・アリゴテ2020年、デュジャック・フィス・エ・ペールのモレ・サン・ドニ2020年など。

フランス料理のコースでありながら、日本酒も自然に組み込まれているところが、この店らしいと思います。

レフェルヴェソンス いただいたお酒
レフェルヴェソンス いただいたお酒
レフェルヴェソンス いただいたお酒

Yummies View

レフェルヴェソンスの料理を振り返ると、やはり印象に残るのは野菜の扱い方です。

多彩な野菜を使ったサラダもそうですが、特に象徴的なのが蕪のスペシャリテ。

蕪という身近な食材を、時間をかけて一皿に仕上げる。

そこには、食材の価格や希少性とは別の価値観があります。

生江シェフの料理は、フランス料理の技法を土台にしながら、日本の食材や食文化を生かしたものです。

この日のコースも、魚介、野菜、山菜、肉、チーズと変化に富んだ内容でした。

料理の背景にある考え方が明確で、プレゼンテーションにも工夫があります。

一方、料理のテーマや演出がしっかりしているだけに、シェフが伝えたいことを受け取りながら食事をする感覚もあります。

気軽に美味しいものを食べるというより、時間をかけて一つの食体験を楽しむレストランです。

サービスや空間にも一貫した考え方があり、三つ星という評価にも納得できます。

日本の食材をフランス料理としてどう表現するのか。

その一つの答えを見せてもらったような訪問でした。

Yummies Rating
4.5 / 5