千葉でのゴルフを終え、山武市松尾町にある「Ushimaru」を訪問しました。

訪問時は食べログのイタリアン百名店に選ばれ、The Tabelog Award Silverも受賞していたレストランです。

都心から離れた場所にありながら、わざわざ足を運ぶ理由がよくわかりました。千葉の食材と、その土地の季節を一つのコースで味わえる店でした。

お店について

Ushimaruが掲げるのは「千産千消」です。

九十九里の魚介、山武をはじめとする県内の野菜や肉を中心に、その時季に採れた食材でコースを組み立てています。店の近くには自家農園があります。料理に使う野菜やハーブも育てています。器にも千葉の作家によるものが使われていました。

印象に残ったのは、調理前の食材をテーブルまで運び、実物を見せてくれることです。魚の大きさや野菜の色、採れたばかりの香りを確かめてから料理を味わう。食材への理解が深まり、これから出てくる一皿への期待も高まります。

シェフについて

料理を手がけるのは打矢健シェフです。

目指しているのは、素材の味を生かしたシンプルな料理。千葉の生産者や漁師との関係を築きながら、この土地で採れる食材を料理にしています。

地元の食材を使うこと自体を売り文句にするのではなく、日々の料理の前提としている点に、この店らしさがあります。

味を重ねすぎず、食材が本来持っている甘み、苦味、香り、食感を残す。控えめに見えても、料理の輪郭は明確になっていると感じました。

この日の料理

入梅イワシと庭のズッキーニ

庭でとれたズッキーニを使った一皿から。ズッキーニの花の部分のスープです。

脂の乗った九十九里産のイワシに、若いズッキーニを合わせた一皿も続きます。イワシの強い旨みに、ズッキーニの瑞々しさがよく合います。初夏らしい組み合わせでした。

自家製生ハム「アフェット・ミスト」

肩ロース、ラルド、モモなどを盛り合わせた自家製の生ハムです。部位ごとに脂の量や塩気、熟成香が異なります。一枚ずつ味の輪郭が変わり、食べ比べる面白さがありました。

焼きたてのフォカッチャ

自家製のフォカッチャを、テーブルで切り分けていただきます。焼きたてならではの香りがあり、塩加減も程よい。料理のソースまできれいに味わいたくなるパンでした。

天然うなぎのフリットと山わさび

衣は薄く、軽い仕上がりです。中の天然うなぎはふっくらとしていました。山わさびの辛味と香りが、うなぎの脂を引き締めます。シンプルですが、強く印象に残った一皿です。

モクズガニと春キャベツの冷製パスタ

千葉県産の小麦で打ったパスタに、モクズガニと春キャベツを合わせています。カニの濃い旨みを、キャベツの自然な甘みが受け止めます。冷製でも味が弱くならず、麺の食感もしっかりと感じられました。

タコとニンジンのピュレ

タコは生、茹で、炙りと、部位によって調理法を変えています。火入れによる食感と香りの違いが楽しい。ニンジンの甘いピュレが全体をまとめていました。

新玉ねぎとトコブシ

新玉ねぎの甘みと、トコブシの穏やかな磯の香りを生かした料理です。どちらも味の強い食材ではありません。繊細な火入れと香味の加え方で、持ち味をきれいに引き出していました。

自家農園のアーティチョーク

店の畑で採れたアーティチョークを香ばしくローストしています。外側には焼き目をつけながら、中はふっくらとした火入れです。独特のほろ苦さも残されていました。

渡り蟹のリゾット

渡り蟹の出汁が米の一粒一粒まで染み込んでいます。蟹の旨みは濃厚ですが、トマトの酸味が入ることで重くなりません。蟹爪を生かした盛り付けも印象的でした。

千葉県産ジャージー牛のハネシタ

30カ月肥育し、70日間熟成させたジャージー牛です。

脂の乗った部分と、脂を抑えた赤身を食べ比べました。熟成香と旨みはしっかりしていますが、後味は驚くほど澄んでいます。

肉の強さだけで押さず、脂の質や余韻まで楽しめるステーキでした。

蕗の薹のシャーベット

蕗の薹の苦味を生かしたシャーベットです。口直しとしては個性が強く、山菜の青い香りがはっきりと残ります。木の器を使った見せ方も含め、記憶に残る一品でした。

手打ちパスタとアンズ茸

締めには、アンズ茸を使った温かい手打ちパスタが供されました。キノコの香ばしさと噛むほどに広がる旨みを、手打ち麺が受け止めます。冷製パスタとは違う、素朴で力強い仕上がりでした。

山武牛乳のアイスクリームとヨーグルト

山武の牛乳を使ったアイスクリームとヨーグルトです。乳の自然な甘みと酸味を、そのまま感じられます。飾りすぎないデザートだからこそ、素材の良さがよく分かりました。

コーヒーとカンノーリ

食後は、大多喜町の「焙」によるハンドドリップコーヒーとカンノーリ。カンノーリには松の葉が添えられ、見た目だけでなく香りも楽しめます。コースの最後まで、千葉の土地とのつながりを感じる構成でした。

Yummies View

4.0 / 5

Ushimaruでは、地元の食材を使うことが特別な演出ではありません。料理を作るうえでの自然な出発点になっています。

魚介、野菜、肉、乳製品、小麦まで、千葉の食材を幅広く使いながら、どの皿も同じ方向には寄せていません。食材に応じて火入れや調理法を変え、甘み、苦味、香り、食感を丁寧に見せています。

手を加えすぎない料理ですが、決して単調ではありません。食材の背景を伝えるサービスや千葉の作家による器も含め、一つの食体験として組み立てられていました。

東京から近いとはいえ、気軽に立ち寄る場所ではありません。

ゴルフとは別で、この店を目的に再訪したいと思います。