神保町の「ビリヤニ大澤」を訪問しました。
なかなか予約が取れず、ようやく叶った訪問です。楽しみにしていたのは、大鍋で炊き上げるビリヤニ。口に入れると、一つひとつのスパイスの香りが浮かび上がる、不思議な一皿でした。
お店について
内神田の雑居ビル、その地下一階にあります。外観は控えめ。店内はカウンターが中心で、厨房との距離が近い空間です。
完全予約制で、食事は一斉にスタートします。公式サイトでは、おいしい状態を追求した結果、大鍋でまとめて調理し、炊きたてを提供する形にたどり着いたと説明されています。
提供するビリヤニは、曜日ごとに一種類。定番のチキンとマトンに加え、季節の食材を使う日もあります。
目の前の巨大な鍋から、ビリヤニがよそわれます。これから食べるものが一つの鍋で炊き上がっている。その様子を見ながら、皿を受け取ります。

店主について
店主は大澤孝将さん。長野県出身で、大学時代にインドで食べたビリヤニに衝撃を受けたそうです。
間借りでの営業や、ビリヤニシェアハウスの立ち上げ、モダンインド料理店での勤務を経て、2021年8月に「ビリヤニ大澤」を開業。調理を科学的に分析しながら、理想のビリヤニを追求しています。
この日も、料理について簡潔に説明してくださいました。食べ方や道具にも考えがあり、実際に食べると、その理由が少しずつわかってきます。

この日の料理
この日はチキンビリヤニの日。店外にもチキンと書かれた札が下がっていました。

店主の訓話が10分ほど続きます。ビリヤニにかける熱い想いが伝わってきます。訓話がのあと、瓶のコーラを勧められます。コーラが美味い時はビリヤニが美味かったはず、という説明に納得したのかほぼ全員が頼んでいました。私はコーラはお断りしソーダ水をいただきました。

しばらくするお炊き上がったビリヤニを鍋ごとカウンターに持ってきます。店主自ら取り分けます。

チキンビリヤニ

まず印象に残るのは、香りです。
はっきりと立ち上がるのに、尖った感じはありません。口に入れると、香りがふわっと広がります。
ひとつのビリヤニとして炊き上がっているのに、食べると一つひとつのスパイスが浮かび上がる。噛んでいる間にも香りが変わり、最後はすっと消えていきます。少し幻想的とも感じる、不思議な食べ心地でした。

白いバスマティライスと、スパイスをまとった米が同じ皿に盛られています。どこをすくい、どう混ぜるかで、一口ごとの印象が変わります。
チキンは、繊維の食感を残しながら柔らかい仕上がり。肉と米を一緒に食べると、スパイスの香りも重なります。
付け合わせはライタと山椒オイル。ライタを合わせると口当たりが穏やかになり、香りの感じ方も変わりました。

家族にと食べさせたいと思い、チキンビリヤニをテイクアウトしました。
スパイスとバニラビーンズのアイスクリーム
ビリヤニの食後に合わせて開発したというアイスクリーム。

バニラの甘さと冷たさの中に、シナモンやカルダモンの香りを感じます。ビリヤニを食べた後も、スパイスを楽しむデザートでした。
Yummies View
コの字のカウンターに座るお客さんが、ほとんど会話をせず、黙々とスプーンを口に運んでいました。目を閉じている方もいます。
少し異様にも見える光景ですが、自分が食べ始めると、その気持ちがわかります。
口の中で変わっていく香りを、一つずつ感じたくなる。自然とビリヤニに集中していました。
磁器製のスプーンや、骨を置くためのボウル。食べる時に使う道具にも配慮があります。大澤さんの説明は簡潔で、食事に集中できる距離感でした。
「ビリヤニとは何か」を、一皿で伝えようとしている店だと感じます。食べながら香りを確かめ、ビリヤニと向き合う時間。私にとっては、まさにビリヤニ道場でした。






