神保町の「KHAO」を再訪しました。
2024年にオープンし、『ミシュランガイド東京2026』で一つ星を獲得。東京のタイ料理として初の一つ星となった店です。
今回は前回の訪問時に次回予約を入れての訪問です。
タイ料理をベースに、日本の旬の食材や発酵の技術を取り入れたコース料理を提供するしています。
辛味や酸味、ハーブの強さだけに頼らず、一皿ごとの味をかなり細かく組み立てているのがKHAOの特徴です。
お店について
場所は神保町駅からすぐ。
入口には小さく「KHAO」と書かれたプレートだけ。店内も装飾を抑えた静かな空間です。

カウンター越しにオープンキッチンがあり、料理が仕上がっていく様子を間近で見ることができます。
一方で、料理に使われるタイの器は鮮やか。空間はミニマルですが、料理が出てくると一気にタイらしい色が加わります。
KHAOが軸にしているのは、日本とタイに共通する米、発酵、海の食文化。
タイ料理をそのまま再現するのではなく、日本の食材や発酵の技術を使いながら組み直しています。
シェフ
KHAOを営むのは石山浩一シェフと穂積絵里シェフ。
タイで料理を学び、その経験を土台に、日本の食材や発酵を取り入れています。
カレーペーストや調味料まで細かく手を入れ、タイ料理の形を残しながら、味の出し方はかなり繊細です。
高級食材に置き換えるのではなく、タイ料理の基本を理解した上で、日本で作る意味を考えている店だと感じます。
この日の料理
トムカーガイ

鶏を使ったスープです。
ココナッツのまろやかさに、ハーブの香りと酸味。タイ料理らしい要素はありますが、味の輪郭はきれいに整えられています。
カオヤム

青く色付けしたジャスミンライスを中心に、人参、青菜、ハーブなどをそれぞれ分けて盛り付けています。
最初に食材を見せ、全体を混ぜて完成。
野菜やハーブの食感、香り、酸味が一口の中で重なります。見た目の華やかさだけではなく、混ぜることで料理が完成する構成です。
プードーン

蟹を漬けた一皿。
つけだれには2種類の唐辛子を使っています。蟹の甘みと旨味に、辛味と酸味を重ねる構成。
味は強いですが、単純に辛さを前に出すのではなく、蟹を食べさせるための調味になっています。
ホーマックプラー

魚とグリーンカレーを合わせ、葉で包んで蒸した料理。
ココナッツのまろやかさの中に、魚の旨味とハーブの香り。蒸すことで全体がまとまり、グリーンカレーの印象も穏やかです。
ヤムフアプリー

バナナの花と貝のサラダ。
料理の前に、バナナの花そのものを見せてもらいました。
普段なかなか見ることのない食材だけに、食べる前に素材を知ることで料理への理解も少し変わります。
カリーパフ

コースの合間に出されたタイのカレーパイです。
層になった生地は軽く、香ばしい。コースの流れの中では少し趣向が変わり、スナック感覚で楽しめる一品です。
カノムチンナムヤー

米麺に魚のカレーソース。
華やかなタイの器に盛られ、見た目にもタイ料理らしさがあります。
麺は軽く、ソースには魚の旨味とスパイスの厚み。麺とカレーというシンプルな組み合わせですが、味には深さがあります。
トムヤンクン

酸味、辛味、海老の旨味をまとめた一皿。
誰もが知るタイ料理ですが、それだけに店ごとの差が出やすい料理です。
KHAOでは刺激を強くするのではなく、酸味と辛味のバランスを整えています。
カオマンガイ

鶏とジャスミンライス。
料理としてはかなりシンプルです。
コースの終盤でも華美に見せず、タイの日常的な料理の形を残して出してくるところが印象に残ります。
パッタイ

コースの後にパッタイを追加。
海老、卵、ニラを合わせた一皿です。
コースとは少し違い、タイの街中で食べる料理に近い感覚。
一通りコースを食べた後に、こうした定番料理を追加できるのも面白いところです。
デザート

最後はすいかのソルベ。
甘さは控えめ。タイ料理の余韻を残しつつ、すっきりとコースを終えます。

KHAOで面白いのは、タイ料理を別の料理に変えてしまわないところです。
カオヤム、トムヤムクン、カオマンガイ。
料理名を見れば、よく知られたタイ料理が並びます。
そこに日本の食材や発酵の技術を入れ、一皿ずつ味を整理している。
辛味、酸味、ハーブを強く出すのではなく、それぞれの要素を残しながら、全体をまとめています。
一方で、タイ料理らしい力強さや楽しさは消していません。
色鮮やかな器。目の前のオープンキッチン。バナナの花を見せる演出や、コース途中のカリーパフ。
料理だけではなく、食材や文化まで自然に見せてくれます。
前回訪問時に次の予約を入れたのも、そのあたりに理由があります。
タイ料理を食べるというより、タイ料理を少し深く知ることができる店です。